「おや、仙化したのかね」
ふと気付けば、目の前には優しい顔があった
「まだ１００年かそこらだというのに、お前さんは気が早いんじゃな」
暖かな微笑みにつられて、あたしも微笑を浮かべた
・・・ほほえみ？
あたしは表情を作れる顔など持っていなかったのに
「驚いておるようじゃの」
目の前の人は、とても偉い仙人さま
それは知っている
だって、この人は毎日あたしに水をくれていた
大きく育てと優しい声をかけてくれていた
だからずっと思っていた
その声に応えたいと
何が起きたのかわからず立ち尽くすあたしに、優しい声がかかる
「お前さんは、仙人になったんじゃよ」
顔を上げれば、暖かな笑顔
「焦ることはありはせんよ。ゆっくり慣れていけばいいんじゃ」
言われて、あたしの中から不安がすうっと消えた
この人が言うのなら、間違いない
そう確信が持てるから
「名前をつけてやらなけりゃいかんなぁ」
白いあごひげをしごきながら、仙人さまが言った
「そうさな、立派なお前の樹にふさわしい、華やかな名がよいじゃろう」
「麗麗。忠麗麗、でどうじゃ？」
これが、あたしが生まれた日
なにより嬉しい、大切な日・・・