「ねえ、ユーリ、聞いた？！」
管理棟の一角、教職員に与えられた個室の扉をぶち破らんばかりに飛び込んで来た友人に、ユーリ・フレインは目を丸くした。卒業後間もない、ある秋の午後のことだ。
「どうしたの、サリア。血相を変えて」
「そんな落ち着いてる場合じゃないわよ、大変なの！」
椅子に座るユーリの膝にすがりつくようにして、サリア・オーウェンは髪を振り乱して叫んだ。
「リリアーナが結婚するっていうのよ！！！」
サリアがこの秋から勤め始めた魔法研究所は、聖メルテ王国内にも支局を持ち、研究内容以外にも様々なニュースが流れてくるのだという。その中に、最年少魔法使いの少女が結婚するというゴシップが紛れ込んでいたようだ。
「つまり、サリアは先を越されて悔しいと」
「ちちちちち違うわよぅ」
冷静に指摘するユーリに、サリアは顔を真っ赤にして否定する。
「はいはい。そういうことにしておいてあげるわ。それで、相手は誰？」
ユーリが尋ねると、サリアは首を傾げた。
「・・・わからないわ」
「聞いて来なかったの？」
「・・・うん」
ユーリは大きくため息をついた。
「ユーリ、聞いて聞いて大変なのよ！」
勢い良く扉が開け放たれたのは、それからわずか数日後だった。どこか既視感を覚える展開に、ユーリは額を押さえた。
「とりあえず扉を閉めてそこに座って」
飛び込んで来たサリアを、静かな口調で有無を言わせず座らせる。
「それで、今度は何？ リリアーナに子供でも出来たの？」
「違うわよ！ あのね、あのね、リリアーナの結婚、政略結婚なのよ！」
「・・・あら、そうなの」
さすがにユーリも意外そうに目をみはった。リリアーナの実家は、豪農ではあっても貴族階級ではない。そういうものと縁があるとは思えなかった。
だが、続くサリアの言葉には、さらにあっけにとられることになる。
「ぼんくら息子に嫁がされる悲劇の少女なんですって！」
研究所に入ってきた情報によると、聖メルテ王国の聖王家に連なる血筋の家が、史上最年少で正魔法使いになった少女の噂を聞きつけたのが発端だという。
その家、カルデローネ男爵家は、聖王家に連なると言っても傍流も傍流で、人材的にもぱっとせず、ここ数代に渡って要職に就けずにいる。先祖代々の財産もあらかた食いつぶし、貴族社会でも肩身の狭い思いをしているところにリリアーナの存在を知ったらしい。そして、そういう優秀な魔法使いが身内にいればハクが付くのではないかという短絡的思考で、ちょうど歳も近いと次男坊との縁談を強引に結ぼうとしているというのだ。
「歳が近いって言ってもね、その人はもう３０過ぎらしいのよ。しかも、メルテの社交界でもかなり評判が悪いんですって。ひどいと思わない？ リリアーナ自身はその気は全くなくて何度も断ったのに、しつこく迫って来てて、でも相手は仮にも貴族だから強引なことも出来なくて、すっごく困ってるみたいなの。なんとかしてあげられないかしら」
「そうね・・・出来ることなら助けてあげたいけれど・・・」
なにやら義憤に駆られたらしいサリアをなだめつつ、ユーリは考えを巡らせた。
「みんなに、連絡を取ってみましょうか」
(to be continued・・・)
プリズム・オリジン終了記念企画第２弾、いよいよスタートです！
その名も「リリアーナを救え！！」
望まぬ求婚に困るリリアーナを、みなさんの力で助け出してあげてくださいな♪
さて、今回は普通の単発リアクションと、ちょっと趣向が異なります。
普通にアクションをかけようにも、学園にもメルテにもいらっしゃらないＰＣさんも多いわけです。そこで、がっつり数字でゲームを進行することにいたしました。
相手は、今は昔日の面影はないとはいえ、聖メルテ王国の王族の血を引いていることは確かです。貴重な人材である魔法使いといえども、卒業したばかりのひよっこが、おいそれと影響を与えられる存在ではありません。
そこで、実力で相手を黙らせるために、魔法の力を結集しようではありませんか！
まずはみなさん、お手持ちのプリズムをご用意下さい。
みなさんがお持ちのプリズムを１個消費するごとに、ポイントが入ります。
そのポイントが一定量を超えると、カルデローネ家といえども無視出来ない力を示すことが出来たとして、リリアーナは無体な求婚から解放されることになります。
ＰＣは週に一度、プリズムの使用を行えます。
行えるのは「プリズムの消費」と「プリズムの譲渡」のどちらかです。
一度に使用できるプリズムは１種類のみです。ただし、上限はありません。いくつでも使用してＯＫです。
初回〆切の’１２ ４／２４（日）から、４週にわたって行います。最後の〆切は ５／１６（日）です。
〆切は毎週日曜日必着です。先週使用しなかったので今週に２回分、といったことはできません。
さて、ここで重要なことがひとつ。
ポイントは、「消費したプリズムと対応するＰＣの魔法のレベル」だけ獲得することが出来ます。
つまり、レベルが高い魔法のプリズムを消費した方が、プリズムの数は同じでもポイントが多く入るということです。
また、プリズムの使用の際に、この事件に対するＰＣの発言を、「ＰＣメッセージ」として送ることが出来ます。
リリアーナへの励ましの言葉や聖メルテ王国の魔法顧問団への嘆願、縁談を無効にするためのちょっとした行動など、キャラクターの立場からのコメントを添えていただくことで、内容によって３〜５ポイントが加算されます。
これはアクションではありません。一言添える、というイメージでお願いします。
なお、この「ＰＣメッセージ」は、必ずしも書く必要はありません。
エンディングは、３パターン。
最終的な合計ポイントが規定ラインに到達すれば、破談に持ち込んでリリアーナを救えたハッピーエンドです。
規定ラインまでは届かなくとも最低ラインには到達すれば、とりあえず結婚話を保留に出来たノーマルエンド、最低ラインにも到達しなかった場合は、結婚を阻止出来なかったバッドエンドとなります。
終了記念のお祭り企画ですので、あまり厳しいバランスにはしていません。が、手を抜いてはいい結果にはなりませんのでご注意を。ハッピーエンドには、みなさん全員の協力が必要となるでしょう。力を合わせて、ぜひリリアーナを助けてあげて下さい。
必要ポイントの公開はしませんが、毎週〆切後にＮＰＣからのコメントを掲載します。そこから状況を推測してみて下さいね。
プリズムの消費はメール、または下のメールフォームから行えます。
確認のため、’１２ ３／２５（日）に最終的なプリズム数を記入したメールをお送りしています。
追加のプリズム配布もありますので、しっかりチェックして下さいね。プリズムが増えるのは、これが最後です。上手に使いきってもらえればと思います。
ただし、魔法のレベルアップは出来ません。ご了承下さい。
ご参加ありがとうございました！
| みんなの耳にも入っちゃったんだね。・・・心配かけてゴメン。 うん。確かに、ちょっと困ったことにはなってるんだ。 何度お断りしても、「身分なんて気にしなくていい」とか「実家への援助もしてやる」とか「一般人に混じって働くなんて事はしなくていいんだ」とか、こっちが身分違いに気後れしているだけだと思い込んでる感じなんだよね。 ティベリオ様（あ、男爵家のご子息ね）は、もう結婚したみたいに、妻に（つまり、あたしのこと）会いに来るのは当然の権利だ、なんて顧問団の本部にまで入って来たりして・・・だから、問題が起きないように、あたしは今、自宅待機中なの。顧問団本部は魔法使いじゃない人には危ない場所もあるし、もちろんいろんな機密だってあるから。 せっかく顧問団に入ったのに、役に立つどころか迷惑かけて・・・すごく悔しいよ。 だから、みんなが手を差し伸べてくれて、とっても嬉しい。ひとりじゃないって、本当に心強いね。あたし、頑張るよ。 それで、あの・・・できれば、あんまり広めないでもらえると嬉しいかな。やっぱり、ほら、いろいろ恥ずかしいから・・・ 『第１ターンＮＰＣコメント リリアーナ・カーニー』 |
| 友人の窮状に立ち上がったきみたちには、我々顧問団の対応は不甲斐ないと思われているのだろうな。だが、事は複雑で、強引な手法を取ることは出来ないのだよ。 まず、カルデローネ家は凋落したとは言え、爵位を持つ貴族だ。その面子を正面から潰すようなことをすれば、他の貴族たちが黙ってはいまい。また、聖王国外でこのことが大きく取り沙汰されれば、国際問題へと発展しかねない。 そうなったとき、原因を作ったとして責められ苦しむのは、より弱い立場にあるリリアーナくんだ。それを回避するには、事を荒立てることなくおさめなくてはならない。わかってもらえるだろうか。 顧問団も少しずつ動いている。だから今はそっと、友からの言葉を届けてあげてくれたまえ。特に大声を上げる必要はないのだ。国を越えて伝わる友人たちの優しさ。今の彼女には、それが何よりだろうと思う。 『第２ターンＮＰＣコメント ルオーネ・ジェッダ』 |
| リリ姉、ようやく自宅待機から解放されたんだ！ なんでも、どっか偉いヒトから、アホボンに横やりが入ったって話。職場にまで押しかけるのは非常識だってね。それなりに影響を与えられる人にツテを辿れたのは、みんなが色々やってくれたおかげもあるんだって。一応、感謝しとくよ。まだ仕事に行けるようになっただけで、話は消えた訳じゃないけど。 でもまあ、あのアホボンとその家族も、強引過ぎたってやっと気付いたみたいでさ。改めて手順を踏んで求婚に来たんだけど。「もしや将来を誓った相手がいるから諾と言えないのでは。もしそうなら身を引くから正直に言ってくれ」とか言っちゃって。こんなの、「いる」って言えば証拠を見せろとかごねて本当に結婚するまで納得しないだろうし、「いない」って言えばじゃあ問題はないだろうって無理矢理話を進めるのが目に見えてるよ。よくもまあ恩着せがましく言えるもんだよね。・・・え？ リリ姉は誰か想う相手がいるだろうって？ そっ、そんなのいないよ、いるわけないよ！ 家にこもってた間、寂しそうに窓の外見てたりしたのは、そんなんじゃないよ、きっと・・・。 時間の余裕は、もうあんまりないみたいだ。向こうも焦ってる感じがする。だから、頼むよ。もう少しだけ、リリ姉に力を貸して・・・！ 『第３ターンＮＰＣコメント ロード』 |
| 教会の鐘が鳴る。 澄んだ青空に白い鳩が舞い上がり、沿道の人々から歓声が上がった。 「おめでとう、ティベリオ！」 「結婚、おめでとう！」 道から見上げる階段の上、教会の扉が開いて腕を組んだ男女が現れると、その歓声はさらに大きくなった。 共に白い正装に身を包んだ男女は、ゆっくりとファサードを降りて行く。そしてじっと待つ白馬がつながれた馬車に乗り込むと、窓から人々に手を振った。 無数の祝福の声をあとに、馬車が軽やかに去って行く。少し離れた木立の影にいた小柄な人物は、それを見届けると反対方向へと歩き始めた。 ぱさり、と被っていたフードをのけると、現れたのはまだ幼さの残る少女の顔。肩には小さな人形が乗っている。 「これでホントに終わりだね」 リリアーナは肩のロードに笑みを向けた。 「ティベリオ様も、これで幸せになれるといいなぁ」 「どうだっていいじゃん、あんなヤツ」 ロードはリリアーナの肩に腰を下ろして足をぶらぶらとさせながら、唇を尖らせた。 「リリ姉はお人好しすぎるよ。あれだけ迷惑かけられてたのにさ」 「まあねぇ・・・大変だったのは確かだけど」 足を止めて空を仰ぐ。まぶしい太陽に目を細め、リリアーナは笑った。 「でも、いい事もいっぱいあったよ。だから、ティベリオ様には感謝したいくらい」 「えー・・・」 不満げなロードの頭を軽く撫でる。強がりではなく、本当にそう思っているのだ。こんなアクシデントがなければ気付けなかったかもしれないたくさんの宝物を、見つけることが出来たのだから。 「リリアーナ・・・！」 遠くから呼ぶ声がした。目を向ければ、道の向こうに人影が見える。 パッと顔を輝かせ、リリアーナは大きく手を振ると、その人物の元へと駆け出した。 （Ｈａｐｐｙ Ｅｎｄ！） |
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