リバルトがその話を知ったのは、クラスメイトの中では遅い方だった。新しい環境に慣れるために必死だったというのもあるが、所員たちの噂話の輪に積極的に入るのは、あまり得意ではないせいもある。級友からの連絡に、驚いて尋ね返した。 「なんだって、リリアーナが？」 「ええ」 遠話をつないだユーリが、冷静にうなずいた。 「だけど、こちらに届くまでに話が歪んでいる可能性もあるでしょう？ だから、王都にいるリバルトに、男爵家について正しい情報を聞きたくて」 「といってもなぁ・・・」 リバルトは困って腕組みをした。 「俺はこの国の生まれじゃないし、ゴシップには疎い。正直、そんな男爵がいたことすら初耳だ」 「そうだろうとは思ったわ。でも、誰か知っていそうな人に話を聞いてもらうことはできない？」 ユーリの言葉に、メルテにきて知り合った人の顔を次々と思い浮かべる。頼りになりそうな相手は・・・ 「あ」 とある一人に思い当たり、リバルトはハッとした。 「確か、今、ルオーネさんが帰ってきてるはずだ。あの人に聞いてみるよ」 「ああ、そうね。あの人なら客観的な話を聞かせてくれそうだわ」 「何かわかったらすぐ連絡する」 「ええ、お願いね」 遠話が切れると、すぐさまリバルトは立ち上がった。 「行くぞ、グリーン」 「そうじゃな。魔法使いとしての高い才能をもつ少女を、貴族の体面のために犠牲にするなど、あってはならぬ」 肩のフェロウも、厳しい顔でうなずいた。 同じ頃、シューシェンの海上でソールもまた、クラスメイトの災難を知らされていた。 「なんつーか、アホらしいこと考えるんだな、貴族って」 「まあね」 あきれたようなソールに、トーヤが苦笑した声を返す。 「でも、貴族として権力を持ってる人物が追いつめられてなりふり構わなくなると、いろいろ面倒なものだよ」 「だよなぁ」 ソールは嘆息して首を振る。すると、頭の上でリリィが無邪気に言った。 「リリアーナ、結婚するの？」 「かもしんねーらしい。・・・けど、嫌がってんだろ？」 頭上のフェロウに答えてから、ソールはトーヤとの会話に戻る。 「そりゃあね。リリアーナは断ったのにつきまとってるって時点で、相手が誰であろうとまっとうな話じゃないよ」 「ホント、面倒なんだな」 「とりあえず、ぼくたちもいろいろ動いてみるつもりだから。ソールにも何か頼むかもしれないってことだけ、ちょっと覚えておいてもらえるかい」 「了解」 友人の苦境のために協力することに是非はない。快諾して遠話を終えたソールは、再びため息をつき、晴れ渡った空を見上げた。 「いっそ、アイツがかっさらって逃げちまえばいいのに」 青空に浮かぶ友の面影に向けた呟きは、舷側に打ちつけた波の音に紛れて消えた。
(to be continued・・・)
とてつもなくお久しぶりです。まさか三ヵ月もかかるとは・・・しかも短い(汗)。 とりあえず更新の書き込みをするためだけの１話目で申し訳ありません。 次ももしかしたら３か月後・・・いやいや！ サイト移転もしなくてはいけないですし。 頑張ります！ プリズム・オリジン トップへ インデックスへ |